今回は以前に現場調査を行った木部塗装のトラブルについて説明します。
ある建物で施工完了・引き渡し後に、元請様が弊社の得意先の塗装店様へ現場調査を依頼され、同行にて伺いました。
(新築時の塗装については別業者様が行われたということです。)
調査依頼の内容は木材表面の白華と塗膜の剥離を補修してほしいというものです。
まず現場写真です。
壁の羽目板部分が今回のトラブルの箇所です。
こちらの木材は不燃薬剤を注入したものが使用されています。
風除室と言われる建物へ入る全前室の部分です。
上には庇が見えていますが、かなり高さがあり風向きによっては雨が吹き込む状態です。
拡大写真①
白くぼやけている部分は、不燃薬剤の溶出により表面に白華が起こった状態です。
不燃薬剤は水溶性のため、雨や湿気などの水分が当たることで表面に溶け出し、
水分が蒸発することで白い結晶が残り、このような状態になります。
拡大写真②
おそらく新築時の塗装仕様としては、「着色+白華抑制効果のあるウレタンクリヤー」だと思われますが、
この白華抑制効果のあるウレタンクリヤーは屋内での使用に限ります。
すなわち屋外耐候性は無いため、雨や湿気、紫外線に対しては保護効果がありません。
そのためこのように短期間で劣化し、塗膜剥離が起こっています。
(庇はあるが雨、風、紫外線を完全に防ぐ状態ではないためと考えられます)
こちらのトラブルに対して、手直しの方法を提案するというのが今回の調査の目的です。
まず、現状の塗膜をどうするかですが、これは剥離するしかありません。
完全に剥離するためには剥離剤や電動工具などを使用する必要があります。
その上で新たにどんな塗料を塗装するかですが、こちらは色々と調べました。
まず白華抑制効果のあるクリヤー塗料で屋外耐候性を持つものがあるか?ですが、ありませんでした。
そのためオイルステイン等で着色の上、外部用(屋外耐候性のある)ウレタンクリヤー塗料を塗装する
のが最適と考えられます。
この仕様は屋外耐候性を重視したもので、白華抑制については、極力木材に水分が入り込むのを防ぐように
塗装を行うという方法しかありません。
本来であれば壁にはめる前に木材の6面すべてに塗膜を付ける様に塗装し、外気に触れない状態にするのが
理想ですが、建物が出来上がっている状態では6面に塗装することはできません。
そのため現状まではいかないにしても白華は発生すると思われます。
今回の対応としてはできるだけ白華と塗膜剥離を抑えることを目的に考えて仕様を検討しました。
100%の回答ではないですが、優先順位を付けての対応となりました。
(注意)
この内容で補修をした場合、基材となる木材は不燃材になりますが、その上に塗装されるウレタンクリヤーは
不燃材料には該当しません。そのため、基材と仕上材の不燃認定の部分で問題が発生する可能性があります。
そちらを踏まえた上での補修になると考えられます。